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堺事業所の山本です。
今回は、「自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える『生きづらさ』の正体」を読みました。
この書籍は、長年にわたり自閉症の方々を診察してきた精神科医師によって書かれたもので、著者の医学的目線だけではなく支援者としての目線も合わせた、自閉症についての解説がされています。
自分にとって勉強になったこと、印象に残ったことを報告します。
〇自閉症スペクトラムは「病気」ではなく「少数派の種族」
著者の言葉で一番印象に残ったのが、「自閉症の方々は『病気』ではなく『少数派の種族』である」というものです。
書籍によると、「自閉症スペクトラム」は、
・自閉症の傾向が強いために日常生活に支障が出る人
・自閉症のほかに、うつや不安障害などの精神的問題も抱えた人
など定義が広い「自閉症スペクトラム障害」と、
・自閉症の要素は持っているが、極めて弱い特徴である人
・自閉症の要素は持っているが、社会人として自立し、障害者手帳は交付されていない人
などの「非障害自閉症スペクトラム」
と呼ばれるものに分類されるということです。
自閉症は一様に定義できないこと、また人によっても特性が違うのだということを知りました。
そのような自閉症スペクトラムの人たちの中でも、特に特性が強く、一見周囲から理解できない行動をとる自閉症の人たちは、「病気だ」とみなされてしまうことがあるようです。
けれども筆者によれば、「自閉症スペクトラム」と分類される人たちは、人口の10%を占めるそうです。
実際、私が思っていたよりも多い数字で非常に驚きました。
ということは、自閉症の方々は人口的にも特別珍しいわけではなく、気づかないうちに自閉症の特性を持ちながら暮らしている人たちもいるということです。
そのような点から考えると、筆者の「自閉症の人たちは、病気ではなく、少数派の種族である」という主張は、全くその通りであると感じました。
支援をしていく上で、まずはそのような認識を持ちながら訓練をすることが大切だな、と思いました。
〇自閉症の特徴について
私は今まで、自閉症の強い特徴を持つ人たちにあまりであったことがなく、大体のイメージしか持っていませんでした。
・自閉症だから「自分で閉じこもる?」性質?
・なんとなくコミュニケーションが苦手な人たち
というようなものです。
今回この本を読むことで、自分がぼんやりと描いていたイメージをしっかり書き換えることができました。
・臨機応変な対人関係が苦手→ex)言葉を文字通り捉える、場の状況や相手の表情を読んで行動することが苦手など
・こだわりが強い→自分の関心、やり方、ペースなどを維持したいという傾向。維持することで精神的な安定につながることも
・具体的で明確な情報を理解しやすい→具体的なルールの提示、分かりやすい視覚的な資料を使っての説明など
これら以外にもいろいろとありますが、なんとなく感覚で「こんなもんだ」と頭の中でぼやっとしていたことが、この書籍によって自分の中でも明確にすることができました。
私の主な業務はパソコン訓練ですが、自閉症の方々の特徴を知ることで、自分でも伝え方の工夫、コミュニケーションの取り方において注意する点を認識することができたので、非常に勉強になりました。
〇得意を伸ばすことが大切
自閉症の方々への支援方法で気を付けること、これに関してもたくさんのことが書籍では記述されていました。
中でも記憶に残ったのが「得意を伸ばすことが大切である」ということです。
このことに関しては、主に障害を持った方々が幼児期や思春期であるときに心がけておくべき、という記述がありました。
けれども、これは必ずしも幼児期、思春期だけの話ではないと思います。
ある程度、いくら嫌いなことでも大人になるとできなければいけないことは出現します。
しかし、本人が「これだけはどうしても無理だ」というものに関しては、無理に克服しないことが大事と分かりました。
どうしても苦手なものを克服しようと無理やりすすめていくことが、不登校、引きこもり、うつ、強迫性障害といったような二次的問題を引き起こし、ただでさえ障害特性で苦しむ本人をさらに苦しめることになる、と著者は述べています。
代わりに得意なことをどんどん伸ばしていく。
自分ではこれができるんだ、と自信を付けてもらう。
これは就労支援においても案外有効ではないのか、と率直に思いました。
〇まとめ
自閉症スペクトラムについての概要、当事者たちの日常、そして支援者がどうすべきかなど、様々なことをこの書籍で学ぶことができました。
私は支援スタッフではなく、パソコン訓練担当ですので、パソコン訓練を通してでしか利用者さんに接することはできません。
ただ、今回であったこの書籍をバイブルとして、自閉症スペクトラムをお持ちの利用者さんの気持ちを少しでも理解し、よりよい訓練ができるように努めていきたいです。