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堺事業所の山本です。 今回は、書籍「自閉症の人の人間力を育てる」を読みました。 筆者は精神医学研究所や大学病院などでの勤務を経て福祉業界に移った人物で、これまでの経歴の中で自閉症の人たちを見つめてきた人です。 自閉症の方々へのかかわり方、そして社会で生き抜いていくためにどのように支援をしていくかに焦点があてられた内容になっています。 この本を読んで、勉強になったこと、感じたことについて報告します。   〇IQだけで自閉症の人の知能を判断しないこと 支援者が障害のある人たちの能力を判断するのによく使われるのがIQの数字であるけれども、この数字は必ずしもその人の知能を100%表すものではない。 第2章はそのような内容から始まりました。 筆者は医療機関で長年、心理検査や知能検査を担当してきた人ですが、彼の主張は 「IQの数字が高い≠能力が高い」 というものでした。 ・高いIQの数字を持っていたとしても、社会的に問題行動を平気で起こしてしまう人たちの事例 ・知能検査で自閉症の人の測定が難しいケース→質問の意味が分かっていてもうまく答えられないなど言葉が検査結果に影響する といった点などから、IQの数字は必ずしも当てになるものではないと、筆者は主張しています。 IQの数字だけで知的能力を判断するのではなく、知的能力を活用する力「知的効率」についても合わせて見ていかなければいけないのだそうです。 筆者曰く、「今までの経験を応用・発展させる創造性」「社会的ルールの理解」「自分の意思を伝える自己主張」といった3つの面が知的効率であり、これらがバランスよく育っていることが、知的効率が高いと言えるんだそうです。   このような検査などには全く詳しくない私でしたが、病院の検査結果というものはほとんど正しいものだと信じて生きてきたところがあります。 ただ、その数値、結果が正しいという考え方は必ずしも、自閉症の方だけでなく障害のある方すべての人にとって良くないということを学ぶことができました。   〇IQや言語能力など限られた視点で見ることは、その人の能力を限定することもある IQや言語能力は障害のある人たち、そして自閉症の人たちを判断する材料の一つであるという考え方はその通りであると考えます。 ただ実際、 ・障害のある人、その人自身の言語能力 ・特性による特徴的な動き・習性 ・日々の作業の成果・学習の結果など このような要素から、私たちは「この人は大体このようなことしかできないのではないか」となんとなしに決めつけてしまうこともあるのではないか、と思いました。 私は現在プライベートで、自閉症を持つ子のパソコン支援をしています。 その中で、「この子はこういうことは難しいから、学習内容はこれくらいにしておこう」と考えながら授業をすることがあります。 その判断は、本人が嫌にならない程度の学習内容を提供することにつながったり、その子の「できる」という自己肯定感を上げることにはなるかと思います。 一方で、学習内容、トレーニング内容を限定することでその子の能力の限界をどこか自分が決めてしまっているのではないか、そのような事実にも気づかされはっとなりました。   〇自閉症の人たちの考え方、伝え方を知ること 多くの人たちが自閉症の人たちに持つイメージの中に ・コミュニケーションが苦手 というものがあるかと思います。 特にうまく言語で相手に伝えることができない人たちに対しては、「言語障害がある」「コミュニケーション障害がある」というふうに見なしがちです。 しかしながら、筆者は「彼らにコミュニケーション障害がある」と捉えるのではなく、彼らの考え方、伝え方を知ることが大事だと主張しています。 これについても全くその通りである、と考えます。 例えば次のようなものは、自閉症の人たちにとっては分かりにくい言葉、かけられたくない言葉であると筆者は挙げています。 ・「かたづけましょう」→そもそも片付けるがわからない。「元にあった場所に戻しましょう」など具体的な言葉に置き換える ・「〇〇しては駄目です」→否定ではなく違う行動を指示するお願い「その代わり△△してください」 ・「きれいにしてください」→きれいの基準が分かりにくい。汚れがなくなる場面を掃除などで分かりやすく見せる。 など、伝え方を工夫することで伝わりやすくなることがたくさんあるのだ、と学びました。 分かりにくい言葉でずっと話しかけられていると、中には嫌になってかんしゃくを起こしてしまうような人たちもいると聞き、こちら側の伝え方はあくまでこちらの一方的な目線でしかないのだということが分かりました。 私も言語能力が非常に弱い部分がありますので、自分の伝え方に関しては工夫が必要だと感じています。 訓練の中でも、よりよい伝え方ができないか。意識して模索しようと思います。   〇まとめ 今回は、この書籍の中で印象に残った ・知能指数と知能効率の関係 ・IQ指数だけで自閉症の方の能力を判断してはいけない理由 ・自閉症の方の考え方、彼らへの伝え方 について触れました。 自分が実際訓練をしていく中で活かせそうな情報にたくさん出会うことができ、よかったと思います。 今回言及しなかった第3章ですが、自閉症の方たちが社会で自立するために ・どのように教えるのか ・「自立すること」を知ってもらうことのたいせつさ など、こちらも働いて生きていくために何が必要なのかということがたくさん書かれていました。 しっかり読み返して、こちらも自分の支援に活かしていきたいと思います。