https://crossjob.or.jp/map/ https://crossjob.or.jp/link

皆様 お疲れ様です。クロスジョブ堺の谷口です。 今回は第32回職業リハビリテーション実践・研究発表会へ参加したので、その報告を掲載していきます。 日程は2024年11月13日〜14日の2日間で開催されていました。私も14日にポスター発表を初めてさせていただきました。   1.11月13日の感想 ①特別講演の感想  特別公演のテーマは「障害者を中心にした障害者雇用体制の構築〜職場・家庭・地域の就労支援ネットワークによる支援とともに〜」で、株式会社MBTジョブレオーネの岡山代表のお話を拝聴しました。   岡山代表のお話で印象的だったのは、以下の点でした。 (1)「どんな人と働きたいか」という明確なビジョンを持つこと 法定雇用率だけを意識するのではなく「こういう人と一緒に働きたい」という具体的なイメージを持つことが大切というお話がありました。そうすることで、単なる数合わせではなく、個々の能力や適性に応じた雇用を実現することができたとおっしゃっていました。 (2)働きながらの成長を支援すること 仕事を通じて、障害のある方も様々なことに気づき、成長していきます。企業側はそのような成長をサポートする環境を提供することが求められるということもおっしゃっていました。 (3)休暇を活用した存在感の認識 現場の従業員に、障害のある方の存在意義や貢献度を認識してもらうために、あえて有給休暇を5日間取得してもらったという事例は非常に勉強になりました。休暇によって周囲がその人の仕事の重要性に気づくきっかけになったとおっしゃっていました。 (4)現場の協力を得て仕事を探す 働いている現場の看護師に協力してもらい、障害のある従業員ができる仕事を探したという事例は、現場の視点を活かした事例でした。現場のニーズをよく理解している人が関わることで、より適切な仕事を見つけ出すことができるということでした。現場の人にお願いして仕事を見つけていくことが大事だと改めて感じました。 (5)職場・家庭・支援者間の密な連携 受け入れ後のサポート体制として、職場と家庭、そして支援者間で情報を共有することが重要です。これにより、障害のある方が安心して働き続けられる環境を整えることができます。やはり、この3つの関係者間で情報を共有することが重要なのだと改めて認識することができました。 (6)問題への迅速な対応 困ったことがあれば、すぐに解決することが大切です。迅速な対応は、障害のある方の不安を軽減し、企業との信頼関係を築くことにつながります。「相談をしたら解決してくれる」という経験は成功体験として残っていくのだと思いました。 (7)現場への丁寧な説明と協力要請 現場の従業員の理解と協力を得るためには、丁寧に説明し、協力を依頼する姿勢が不可欠です。「これしか方法はありません」と強くおっしゃていました。私たちが行なっているスタッフ実習はまさにこの言葉を体現しているとおもいました。 (8)状況に応じた柔軟な対応 無理なことを無理強いするのではなく、必要に応じて仕事内容や職場環境を変えていくことも重要です。この視点は今後フォローアップや定着支援の中で企業様にお伝えしていきたいと思います。 (9)まとめ  岡山代表のお話は、障害者雇用を単なる義務ではなく、障害のある方と企業双方にとって有益なものにするためのヒントに満ちていました。特に、現場の巻き込み方、関係機関との連携、そして何より「共に働く仲間」という視点が重要であることを改めて認識させられる内容でした。   2.11月14日の感想 ①ポスター発表をした感想 (1)当事者の切実な状況 高次脳機能障害のある当事者の方々が本当に困っているということを改めて認識できたことは、研究の原点を再確認する上で非常に重要な経験だったと思います。 (2)医療・福祉関係者の意識 研究にご協力いただいた様々な方々(医療関係者、福祉関係者など)からお話を伺う中で、それぞれの立場からの考え方や課題が見えてきたことは、多角的な視点を得る上で貴重な経験でした。 (3)医療と就労支援機関の連携の必要性 なやクリニックのセラピストへのインタビューで「高次脳機能障害のことを知っているところと連携したい」という回答があり、これは他の医療機関の方々からも共感を得られたとのことです。このことから、医療機関と就労移行支援事業所などの連携において福祉側も最低限の知識を学んでいることが非常に重要であることが示唆されました。 (4)紹介タイミングの難しさ 「どのタイミングで就労移行支援事業所に紹介すればいいのか」という点は、多くの参加者から難しいという意見をお聞きしました。リハ研終了後に資料を送付したところ、「院内で共有します」という反応があったことから、この課題の根深さが伺えました。 (5)地域格差と社会資源の不足 地域によっては「高次脳機能障害のある方を受け入れてくれる就労移行がない」という状況もあり、そのため医療機関が就労支援を担っているケースもあるとのことです。このことから、高次脳機能障害のある方を支える社会資源が不足していることが浮き彫りになっていると感じました。 (6)今後の展望 (A)他地域への展開: 自身が取り組んでいることを他の地域でも実践してもらえるように、今後も積極的に発表の場に参加していきたいと思います。 (B)連携の実践と発信: なやクリニックとクロスジョブの連携をさらに進め、その実践を発表することで、より公益性の高いものにしていきたいと思います。 (7)まとめ ポスター発表を通して、高次脳機能障害者の就労支援における課題の深刻さ、関係機関の連携の重要性、社会資源の不足などが明確になったと思います。特に、医療機関と就労移行支援事業所との連携、紹介タイミングの難しさ、地域格差といった課題は、今後働いていく上で重点的に取り組むべき課題だと感じました。今後の活動として、研究成果の普及と具体的な連携事例の発信を実施していきたいと思います。   ②第15分科会「高次脳機能障害」 (1)クロスジョブ札幌と企業担当者の連名発表の効果 クロスジョブ札幌と就職先企業の担当者が共同で発表したことで、就職までの流れと就職後の状況がより具体的に伝わり、参加者の理解が深まったと考えられます。当事者(支援機関と企業)双方からの視点を発信できたことで、よりイメージの湧く発表だったと思いました。 (2)福祉と企業の連携に関する情報発信 別の分科会でもクロスジョブ札幌の伊藤さんが発表していたことから、今回のリハ研では、福祉と企業の連携に関する情報を広く共有されたと考えます。 (3)医療機関における就労支援の可能性と課題 医療機関内での就労支援の実践例(幕張式などの活用)を知り「医療機関でも就労支援は可能である」という認識を得られたことは大きな収穫です。ですが、同時に、医療機関職員が企業側の視点を十分に理解できているかどうかという難しさもあると感じました。これは、医療機関が就労支援を行う上での課題だと思います。 (4)高次脳機能障害者の自己理解の重要性 障害者職業総合センターのカウンセラーによる「高次脳機能障害者の自己理解を進めるための研究」の発表は、高次脳機能障害者支援において最も重要かつ難しい課題である「自己理解」に焦点を当てており、非常に勉強になりました。 (5)「困るのを待つ」という支援の視点 「支援対象者自身が困るのを待つことが必要なときもある」という内容は、支援者として重要な視点を改めて認識することができました。この内容は適切なタイミングで「困る」経験を提供し、その経験から前の自分との違いに気づきを促すという考え方でした。訓練や実習の際に、この点を意識して機会を提供することの重要性を再認識することができました。