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こんにちは。堺事業所の荒本です。
3月17日に堺脳損傷協会の研修会「高次脳機能障害と福祉」に参加しましたので、その報告をさせていただきます。
講師は元厚生労働省事務次官の村木厚子先生です。福祉行政の第一線で活躍され、トライアル雇用制度の創設をはじめとする障害者支援に深く関わってこられた方です。
講演の中で特に印象に残った点をいくつかご紹介します。
① 居場所と出番
この言葉は、福祉や教育、職場環境などの文脈でよく使われる概念です。
「居場所」は安心して過ごせる環境や受け入れられていると感じられる場を指し、安全や社会的欲求を満たします。一方、「出番」は自分が役に立つ機会や能力を発揮できる場を指し、承認や自己実現の欲求を満たします。
「居場所」だけでは安心感はあっても、「自分は必要とされていない」と感じてしまうことがあります。一方で「出番」ばかりで安心できる環境がないと、ストレスが増え精神的に不安定になりやすいです。
就労支援の場でも、このバランスを意識しながら関わることが大切だと感じました。
② 病は市に出せ
徳島県海陽町(旧海部町)で使われてきた言葉で、「悩みを抱え込まず、人に話すことが大切」という意味を持ちます。 この町では自殺者がゼロだったそうです。それは、地域ぐるみで悩みを共有する文化があり、困りごとを話せる相手がいること、助けを求めやすい環境が整っていたことが関係しているのかもしれません。
障害特性によっては「自分の気持ちを言葉にすることが苦手」な人もいます。対面だけでなく文字や非言語的な手段で伝えられる仕組みを整えたり、「失敗しても大丈夫」という安心感のある環境をつくることによって、相談しやすい環境を整えていくことが大切だと改めて感じました。
③ 「ただ悩みを聞いてくれる人」に話を聞いてほしい
「若草プロジェクト」という、村木先生が立ち上げた生きづらさを抱える若年女性を支援するプロジェクトがあります。 そこで「どんな人に話を聞いてほしいか?」と問いかけたところ、「ただ悩みを聞いてくれる人」と返ってきたそうです。
自分の気持ちを言葉にするのが難しかったり、話しているうちに混乱してしまったりすると、相手が途中でしびれを切らしてしまうこともあります。特に発達・知的障害のある方にとってはよくあることです。
結果として「相談しても結局は自分が責められた」「わかってもらえなかった」という経験が残り、次第に相談自体をためらうようになってしまうこともままあります。 だからこそ、「ただ聞いてくれる人」の存在は、安全を確保する役割を持つのかもしれません。
話を遮らず最後まで聞くことはもちろん、話の流れを整理するサポートをする、共感を示すなど、ご本人が安心して話せる雰囲気をつくり、相談しやすい環境を整えていきたいと思います。
今回の講演では、人間誰しも「支える側」「支えられる側」だけでは成り立たないこと、両方を行ったり来たりする存在であることを改めて実感しました。どちらもバランスよく満たして健康的な人生を送りたいと思います。
報告は以上です。
最後までお読みいただきありがとうございました。