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新年あけましておめでとうございます。堺の徳谷です。 寒くもなく暑くもない、いい気候ですね。  布団を干して一息ついたところで、このブログを書いています。   タイトルにも書いたとおり、今回は「暮らし」に纏わる本3冊を紹介します。 昨年末に、この3冊を読み進める間に、2019年は「自分の暮らしをよく見つめる」を目標にしよう、という気持ちになりました。 その理由も併せて書けたらな、と思います。       『花森安治 ~美しい「暮し」の創始者』 文藝別冊 KAWADW夢ムック     雑誌「暮しの手帖」の初代編集長が、花森安治です。 3年前、になるんでしょうか? 朝の連ドラ『とと姉ちゃん』で唐沢寿明が演じていました。   襟無しのシャツやスカートを履いて出勤! なんて姿が印象的でしたが、花森氏ご本人も、とてもオシャレな方だったようです。   この本は、花森氏の随筆を6篇収録、他は対談記事や氏を取り巻く同郷人、同業者である出版人等々からの寄稿からなる特集本です。   戦後、物があふれ始めた頃の、若い女性へ向けた文章。 戦中、言葉の「綴り方」と「話し方」について論じながら、「世界というもののなかに、私たちの暮らしがあると考えなければならない」と結ぶ文章。   多くの人物に噛みついた文章を書き散らしていたのと同様、あらゆる問題に意識を巡らしながら、時には前後の記事で矛盾をはらんだ発信もあった花森安治氏について、   「暮しの実態そのものが、まったく多次元の事柄の待ったなしの同時進行という性格だからやむを得ない」   と、飲み込んでしまう茨木のり子さんの意見に、僕も賛成です。 スケッチブックや、花森氏がてがけた装釘本(「装丁」ではなく「装釘」と書くのも、氏のこだわり)の表紙がカラーで収録されているのも嬉しい1冊です。       『写真集K市』 横田眞一郎 著     東京都小金井市を中心に、駅・野川・桜を切り取って撮影したスナップ写真集。   どこにでもある風景を散歩気分で眺めながら、挿入される串田孫一(随筆家・哲学家・詩人)の文章によって「そこで暮らす」視点から見る風景も添えられたように感じられます。   散歩に携えてもいいかもしれません。   「風景や、人の行動範囲に市境はないから」という理由で、撮影範囲が小金井市から少しハミ出ることを良しとした、という著者の言葉にも「気分がいいから、もうちょっと遠くまで歩いてみよう」という気持ちをくすぐられます。       『ダヤンのスケッチ紀行 イタリアへ行こう 』 池田あきこ 著     ダヤンの絵本を1冊も読んだことが無いんですが、よく阪急梅田本店などで原画展をやってたような…   「前々から気になってたけど絵本を読むのは面倒くさい」という、大変失礼なイメージを持っていたところに、ふと出くわして手に取った1冊です。   ネットで事前知識を…と検索すると、ダヤンの住む世界「わちふぃーるど」は、池田あき子さんが起ち上げた革小物メーカーと同じ名前。   革小物の卸売りと、キャラクターとしてのダヤンの登場、わちふぃーるどの世界観が虚に実に広がっていく中、スケッチ紀行シリーズが発刊され、本書はその第3弾ということだそうです。   著者も書くように、ボローニャでの絵本フェアや、皮革市等の仕事がらみで数度の滞在経験があるからでしょうか?   観光名所もそれなりに描かれますが、そのほかの本当になんでもない風景(ひまわり畑やレモンの木、単なる路地や坂道)から、その地での暮らしが伺えるエッセイになっています。   スケッチの中に登場するダヤンの姿よりも、その文章から、なんとなく猫っぽい足取り・視点を体験できたような気がします。       花森安治は、終戦の日の回想に添えて、反戦とは理屈ではなく感情・拒絶反応として芽生えるべきものであり、その原点となるのは日々の暮らしが何者にも優先されるという実感である…というような意を述べられています。   反戦は勿論のこととして、毎日を頑張る力は「普段の暮らしをいかに大切に思えているか」に大きく左右されるんじゃないかな、と思います。   自分の暮らしの範囲は家の中だけじゃありませんよね。 隣近所から職場、自分が訪れるあらゆる所…どこまで自分が「暮し」と感じることができるのか。   急ぎすぎずに歩いて見つめながら、今年一年を過ごしていきたいと思います。