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こんにちは、堺の徳谷です。   お正月休みの最終日、堺市は朝から少し曇っています。 仕事に向けて、そろそろ体と頭を動かして…の、頭の運動を兼ねて読書報告をしたいと思います。     『インヴィジブル』の著者ポール・オースターは、80年代アメリカ文学の代表的人物として、よく挙げられる作家です。   小説の中で「偶然」を多用すること、主人公ないし他の登場人物が全く別のストーリーを語り始める「小説内小説」を展開すること、骨太というのかゴツゴツした印象が強いのにスルスルと読めてしまう地の文章(本を開くと、改行もスペースもないページだらけ)、小説よりも奇想天外な著者自身の半生等々…物凄くアクの強い作家で、挑戦的な小説を多く書いています。     近作では主人公が「老い」に向き合う内容が多かったのですが、本書では、その内容・手法が一転しています。     主としたテーマは「暴力」と「性」の2つ。 序盤では 主人公 ⇔ 登場人物 同士の間で2つの事件が起こります。   中盤、語り手の一人称が二人称・三人称と変化していき…   「アダム・ウォーカー」と名前を与えられていた主人公も「W」と略され…   語られる事件についても、他の人物からの視点が加えられることで「不可視」性が増していき…     各々の物差しにおいて暴力と性の境界を軽々と踏み越える人物と、それを許さない人物が登場し、その人物性・事件性が不可視になっていくにつれ、自分ごととしてテーマが迫ってくる感覚と、普遍的な事柄としてテーマが拡大されていく感覚が同時に起こります。     あらすじを書いてしまうと読む楽しみが減ってしまう小説なので、自分の読書感しか書けないのが残念なのですが… 物語としても、読んでいてとても楽しい1冊です。     海外小説を読む楽しみって、「よくわからないけど、たぶんこんな感じ?」と、不可視だからこそ自由に架空のイメージを持ちやすいところにもあると、僕は思っています。変かもしれませんが、だから逆に著者のお国柄・お人柄がよく伝わってくる…ような感じも。   オースターの他の作品は、海外小説入門としてもオススメです。 気になる方は、ぜひぜひ読んでみてください!