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今回は完全に趣味の読書報告です。   石橋 毅史さんは、主に日本全国の書店を取材して周り、その様子を発信することを生業とされている出版ジャーナリストです。 初の著書『「本屋」は死なない』が韓国・台湾で翻訳出版されたことから行き来が増え、取材対象をアジア圏の書店まで広げ始めたそうです。 その様子は東京/中日新聞の夕刊にて『本屋はアジアをつなぐ』と題された連載となり、そこに書下ろしや追加取材を加えたものが本書です。   日本も、もちろんアジアの一国。 東京は神保町の書店から出発し、大阪なんばのジュンク堂書店などの国内の書店…中国、韓国、そして今まさに表現の自由を巡る渦中にある香港の書店にまで、著者の足と思索が巡らされます。その道程で知ることになる、アジア圏の「表現」「民主化」に纏わる歴史と、現在と地続きの「自由」を巡る運動が本書のメインテーマです。   ~韓国や台湾、あるいは香港には、政治的、社会的なメッセージを積極的に発信する本屋が多くいた。彼らは、言論と表現の自由を保持する役割を担っていることに自覚的だった。~ (まえがきより)   ~Aという本を目立つ場所に並べ、Bという本を棚から外す。日本の各地を巡りながら、この行為の面白さと重さをどう伝えようかと、いつも悩んできた。巡る範囲を東アジアに広げたら、それが重大な行為であることは一目瞭然だった~ (あとがきより)   あくまで自由に本を読む、本を売る、自由に物事を捉え・考える、そのこと自体が困難であった(現在も困難である場所はたくさんあります)現場からの、これは当事者研究ともいえる1冊なのではないか、と僕は思います。   書店を周り続けて正解の無いことをひたすら考えて書き続ける、という著者の目線を存分に味わえる、ちょっと変わった紀行文としても、とても面白いです。むしろ僕は、それを追っかけているミーハーな1ファンです。たまたま今回は、ちょっとタイムリーなテーマだったわけで…。   ただ、自由に考え行動することって、色々なことを知れば知るほど難しいと感じます。 「自由に考える」って、何なのでしょうね? 視野を広げ続ければ一生できないような気もするし、限られた視野の中で既に毎日していることのようにも感じます。石橋さんの本の読後感は、いつもそんな感じ。オススメです。