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■読書報告(第4回)『自閉症スペクトラム~10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体~』 この本で学びになったことを4点あげていきたいと思います。 ➀微妙なコミュニケーションのずれ  ここはすごくわかりやすい具体例があったので、その具体例も合せて紹介していきます。 【具体例】 会社員をしている自閉症スペクトラムのCさんは、何かの話のついでに同僚に自分のすきな作家の話題を出したとき、相手が「いいですね」と言ったので、数日後にその好きな作家の本を1冊持ってきて、「これ面白かったから、ぜひ読んでください」と言ってその相手に貸しました。数日後、相手が本を返しにきたときに感想を尋ねたところ、「面白かったけど、ちょっと難しかったな」と言われました。そこで、さらにその数日後、Cさんは同じ作家の別の本を1冊持ってきて、「これの方がわかりやすいと思うから、貸してあげますよ」と言って相手に貸しました。数日経っても相手が本を返しに来ないので、相手の部署に出向いて「あの本、読みましたか?」と尋ねてみたところ、「すみません、まだ読んでいません」との返事でした。 1ヵ月ほどして、相手がその本を返しに来ました。感想を尋ねたら「面白かった」と答えたので、「『〇〇』という本も面白いですよ。持っていますか?」と聞いたところ、「いや、この作家の本はあまり持っていません」と答えました。そこで、「じゃあ、今度、あなたが持っていないこの作家の本をたくさん貸してあげますよ」と言って、その場は別れました。 数日後、相手の同僚が別の同僚に対して、「Cさんが一方的にしつこく本を貸し付けてきて、恩着せがましい態度を取るので困る」と相談しているところをCさんは目撃し、ショックを受けた。 【学び・気づき】 この事例からは①相手の立場に立って考えること➁2冊目がすぐに返されなかったことは興味がないという反応によるもの➂相手の発言の真意を読めなかったことが、最後の結末に直結していることが分かります。このようなそれぞれの相手の言葉や行動が、どのような意味を表しているのかということを感じることが苦手なことが、特徴としてあることを理解することができました。   ➁こだわりの活用  自閉症スペクトラム方は何らかの「こだわり」を持っていることがある。この「こだわり」は使いようによってはプラスにもマイナスにも働くと記述されている。「こだわり」が世間一般にマイナスに取られるのは、一般常識から離れた対象に向けられること、程度が強すぎて社会生活の支障となるからである。この背景には、強い心理ストレスに晒されていると、こだわりの対象が社会的に異常なものに移ること、対象が異常でなくても限定的で程度が強くなることがある。そのため、本書では“こだわりをその人の精神的な安定度のバロメータ”と見なすのが実用的だと述べている。また、支援においては「こだわり」を無くすことよりも”趣味や日常の生活習慣の中のこだわりを増やし、結果として異常なこだわりを減らす“という発想を持つことで、「こだわり」を活用することと述べている。 【学び・気づき】 以上の内容から「こだわり」への見方が本人のストレスを軽減させる行動の一種なのだと変わりました。また、「こだわり」はある種のルーティン行為のようなものでもあるのだと思いました。そのため、「こだわり」を活かす方向で支援を行うことが重要なのだと学びました。   ➂具体的で明確な情報への強い志向性  自閉症スペクトラムの人たちは、具体的で明確な情報を好む。逆に抽象的な事柄や曖昧な情報への関心が乏しい。そのため、聴覚情報よりも視覚情報への志向性が強い。自閉症スペクトラムの方は、外界から刺激を受け取る際に、1つの感覚に過集中してしまうのかもしれない。 【学び・気づき】  以上の内容から、具体的な声掛けを心がけようと思いました。本書にも例として挙がっておるように、「10分後に来てね」「5時になったら終わって下さい」「11時にそちらに着く予定です」など数字や基準が明確な形でお伝えすることが、相手に伝わりやすいことが分かりました。   ➃相対的な関係を理解することが難しい  自閉症スペクトラムの方は、物事を単独で理解することはできても、その物事とほかの物事との相対的な関係を捉えることが難しい場合がある。例えば、比較の概念(大小、長短など)や関係の概念(上下などの空間関係や、前後などの時間関係)を理解することが難しい(ゆっくりだが理解はできるようになる)。それらの概念より難しいのが人と人の関係である。以下に具体例を示していく。 【具体例】  大学生のDさんは、卒業論文の相談のアポイントメントを取るために指導教授に電話をしたところ、「いま手が離せないから、1時間後にかけなおすように」と言われた。言われた通り、1時間後に電話をかけ直したところ、指導教授が「先ほどは失礼しましたね」と言ったので、Dさんは「大丈夫です。気になされなくていいですよ」と答えた。  この場面では教授と生徒の関係上、生徒であるDさんが「気になされなくていいですよ」は失礼にあたる。このような、複数の人がいる場合に、社会的立場によって人と人とに相対的な関係が発生し、言葉の使い方も変わってくることなどの暗黙のルールが存在する。この暗黙のルールが分からないことがある。 【学び・気づき】  この内容は、本書を読まないと分からなかったと思います。社会的地位によって言葉遣いを変えることは普段自然にしているため、それが出来ないことを想像できていませんでした。このような場面に遭遇することもあることを念頭に置き、遭遇した場合はどのように対応するのが本人にとって良いのかを考えていきたいと思いました。