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■読書報告(第11回)『ケーキの切れない非行少年たち』 ◎本書第3章「非行少年に共通する特徴」  本書第3章において「非行少年に共通する特徴5点セット+1」として➀認知機能の弱さ➁感情統制の弱さ③融通の利かなさ④不適切な自己評価⑤対人スキルの乏しさ+1身体的不器用さの6項目を挙げていた。今回は①から⑤の5項目についてまとめていこうと考えます。    ①認知機能の弱さとは、記憶、知覚、注意、言語理解、判断・推論といった要素が含まれた知的機能を指すとのことでした。そもそもこの力が弱いと、刺激を受け取ったときに間違って知覚し、情報の歪みが生じることによって、“不適切な行動”につながると書かれていました。この“間違って知覚する”という状況が私には理解できていませんでした。先生の言ったことを“聞けていない”状況や、見る力が弱く“見れていない”状況があることに本書を読んで気づきました。実際、訓練で奥行きなどの空間認知が難しい方や、何度練習しても抜けや漏れが出てしまう方がいらっしゃいます。その方々はもれなくこの特徴があるのだと分かりました。    ②感情統制の弱さとは、感情が高ぶると冷静な判断力が鈍くなり、その結果冷静な判断ができずに、不適切な行動につながるというものです。本書では非行少年をモデル例にとっているため、ストレス発散のために性非行に走る少年の例も出てきます。 日々の訓練場面においては、訓練中に大きな声を出す方や、自分の手を噛んでしまう方もいらっしゃいました。その方々には、きっとストレスや嫌なことが背景にあったと分かりました。不適切な行動を今後見かけた場合は、その行動の背景をいっしょに確認していきたいです。    ③融通の利かなさとは、柔軟な思考が苦手であること、別の解決案を考えることが苦手であることを指します。本書では融通の利かなさが被害感につながると記述していました。少年院で、肩がぶつかったときに「ワザとやった」「自分に向かってやってきた」「自分の悪口を言っている」などの思考に陥りやすい。それは「自分の勘違いかもしれない」「気のせいかもしれない」などと考えることが苦手かもしれない考えることが苦手ということでした。融通の利かなさは、訓練場面においても他の利用者さんが“自分に向かってやっている”と思ったり、わざとダメな行動を取っているのではないかと思ったりした場面で聞いたことがりました。融通の利かなさという視点を持ってアセスメントしていくことが重要だと分かりました。    ④不適切な自己評価とは、自分への評価を自分で正しく評価することです。これが苦手だと他者からの評価を悪く受け取ってしまったり、自分は間違っていないと思ったりすることに繋がります。それによって、相手の表情や評価を間違って受け取ってしまい自己肯定感が下がってしまうことに繋がるということでした。相手の表情や評価を、正しく受け取ることが出来ない背景に、このような理由があることを知りました。実際、自己肯定感が低い人は、他者から受け入れられた経験が乏しいことに加えて、他者の良い評価を正しく受け取れない可能性もあるのだと分かりました。   ⑤対人スキルの乏しさとは、本書の少年たちにおいては「嫌なことを断ることができない」「助けを求めることができない」の2つが苦手とのことです。これが苦手になる背景には、聞く力が弱いことで“友達が何を話しているのか分からず話についていけなくなる”ことや、見る力が弱いことで“相手の表情や仕草が読めず、不適切な発言や行動をしてしまう”こと、想像する力が弱いことで“相手の立場が想像できず、相手を不快にさせてしまう”ことに繋がるとのことでした。確かに利用者さんの中でも見る力や聞く力、想像する力が弱いことで、話がかみ合わないこともありました。   ■まとめ  ①~⑤の内容から、それぞれの行動の背景には認知機能の弱さや苦手感があることが理解することが出来ました。感情統制の弱さでは、怒りの感情が本書では記述されていましたが、焦りや悲しみなど仕事をしていると様々な感情をコントロールしながら働かなくてはいけません。なので、訓練の場面で正負両方の感情を持っている時の利用者さんと向き合い面談で一緒に整理していく必要があると思いました。また、④の不適切な自己評価については、本人の評価とスタッフや企業様から頂いた評価を突き合わせて、乖離しているのか同じ意味合いで捉えられているのかを確認する必要があると思いました。   ■参考文献 宮口幸治(2019)「ケーキの切れない非行少年たち」新潮文庫