https://crossjob.or.jp/map/ https://crossjob.or.jp/link

【障害者権利条約の勧告から考えること】     2014年の障害者権利条約の批准から8年。日本政府は初めてその取り組みを評価されることになりました。 それが本年9月、国連の障害者権利委員会から日本政府に対して行われた「勧告」です。     【特別支援教育を巡っては、通常教育に加われない障害児がおり、分けられた状態が長く続いていることに懸念を表明。分離教育の中止に向け、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」に関する国の行動計画を作るよう求めた。(愛媛新聞より)】     各ネットニュースでも大きく取り上げられ、福祉分野以外と思われる一般の方のコメントを目にする機会もありました。その中で印象的だったのが「特別支援の現場を残す・残さない」の二極論で語られていたこと。この勧告内容を障害福祉に限った話だけで考えるとそうなってしまうかもしれません。健常児の教育を受ける権利はどうなるんだ、との意見も多く見かけました。     非常に違和感がありました。障害とは社会の中の問題で、権利条約も障害を社会モデルとしてとらえている点から、特別支援教育だけをどうにかしていくという議論には疑問が残ります。   また、条文の前文には障害が発展する概念であるとの記載があることからも、国連が指摘しているインクルーシブ教育には単純に障害手帳を持っている子供と持っていない子供を同じ場で教育するということだけでなく、日本の教育の在り方全体を見直していく必要があると解釈できるように思います。   不登校やいじめ問題、機能不全の家族、貧困、非行、援助交際の問題など。10代の子供たちが自死を選ぶニュースの多さにも眩暈がしそうです。社会が急速に変わっていく中で、子供たちを取り巻く環境も様変わりしています。競争主義の考えの中で疲弊している子供たちがいないか、振り落とされている子供たちがいないか。能力主義に傾倒する社会、教育環境では、それらが障害になり、生きにくさを感じる子供たちを生み出しているのではないでしょうか。     大切なことは通常学級を含めた教育・授業のユニバーサルデザイン化です。 日本授業UD学会では、授業のユニバーサルデザインを「特別な支援が必要な子を含めて、通常学級におけるすべての子が楽しく学び合い『わかる・できる』ことを目指す授業デザイン」と定義して、授業づくりだけでなく、居心地のよい学級づくりを進めています。   勉強が出来るに越したことはないでしょう。でも、子供たちには学校が楽しい場所、頼れる大人がいる場所であってほしいです。そして、どの子供にとっても居心地のいい環境を作るためには、一人ひとりにあった環境作りと合理的配慮が必要になります。この二点があってこそ色んな子供たちが上手に交じり合うことが出来るでしょうし、合理的配慮なしにインクルーシブを語ることは出来ません。     日本文化は集団生活や「みんな同じ」を大切にしてきました。特別を嫌う国民性に合理的配慮の考えは社会変革の要です。国連からの指摘に対して、障害者雇用の現場からも実践・発信できることはありますね。 あくまで一個人、一ソーシャルワーカーとしての考察でした。         砂川