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2018 クロスジョブ障害者雇用促進フォーラム 企業訪問 第12弾
9月の「2018年度クロスジョブ雇用促進フォーラム」連動企画として、今年の3年勤続表彰のOB・OGの皆様の職場をご訪問させて頂く事になり、今回は株式会社MonotaRO様にご訪問させて頂きました。
株式会社MonotaRO様は、事業者向けに消耗品や工場交換部品、工場用間接資材の販売を行っておられる企業様です。
クロスジョブからは Iさんが就職され、現在も継続して勤務されています。
今回は株式会社MonotaRO様の上森様、鵜狩様と3年勤続されているIさんに貴重なお時間を頂戴し、3年間での変化や働き続ける事ができる理由などについてインタビューをさせて頂きました。
~ Iさんへのインタビュー ~
【クロスジョブの訓練で役に立った事】
辻:Iさんは今年度で働き始めてから3年が経過し、4年目に入っておられます。クロスジョブの訓練で役に立った事、苦手だった事で覚えている事はありますか?
Iさん(以下敬称略「I」と標記):クロスジョブでは、スタッフの方々がアドバイスしてくれた事を覚えています。また、企業実習を経験した発見として就職先候補の幅が広くなった様な気がします。私の一番の悩みは失語症です。そのため、突発的な話を把握する事や、発言をしないといけない事は苦手でした。
【就職して良かったと思う事】
辻:就職されてから良かったと思う事はありますか。
I:私は貧乏性で仕事をしていないと不安ですので、就職して良かったと思っています。
辻:就職して困った事はありましたか?
I:困った事は通勤です。朝は人が多く、JRや阪神電車の乗り換えの時にとても混雑します。この点は早く家を出て会社に到着する事で解消しています。
辻:今は朝何時に家を出ていますか?
I:午前6時2分のバスに乗ります。会社には午前7時15分~7時30分には到着していますね。
辻:通勤時間は約1時間15分ですね。早めに会社に着くことで困った事を解消しているようですが、早く家を出る事は苦になりませんか?
I:はい。早く起きて行動する事も早寝も苦になりません。
【今の仕事のやりがい】
辻:今の仕事のやりがいは、どういったところに感じられますか。
I:私は健常者の方よりも動作が遅いため、ゆっくり丁寧に作業をするのでバーコードを綺麗に貼る事ができます。最近、持ち場が変わる事もあり、作業の手順を知らない派遣会社の方に方法を説明する事もあります。他にも、パレットの看板やパレットの残り物を別のパレットに載せ替える仕事もしています。
辻:持ち場が変わる中で、言葉で他の方に説明する機会はありますか?
I:はい。加工方法が単純な作業はスムーズに言葉がでますが、加工方法が複雑な作業は説明が難しくなります。その際は自分で作業の見本を見せながら手順を伝える工夫をしています。
辻:Iさんが見本を提示しながら、初めて作業を行う方に説明をされているのですね。Iさんの説明を受けた従業員の方の理解度はどうでしょうか。「自分の伝えた事が理解された」という実感はありますか。
I:見本提示は言葉が出にくい事から生まれた苦肉の策ですが、理解してもらったという感覚はありますよ。
【就職後、前職との違い】
辻:就職してから前職との違いを感じられたところはありますか。
I:私の前職はお客様の前で仕事をする事が多く、お客様に質問された場合は即座に答えを出さないといけませんでした。今は品物が多いので品物によって作業手順も異なります。そのため、どの方法が1番良いか答えが分からない事もあります。その場合は作業手順を知っている方に都度確認するようにしています。
【仕事でしんどかった時の乗り越え方】
辻:3年間の中でのしんどかった事やその時の乗り越え方について教えて下さい。
I:物流の仕事にずっと携わっていますが、しんどかった事はあまりありません。週5日勤務ですので、休みの見通しが持ちやすいです。「あと何日行けば週末になる、あと何時間働くと仕事が終わる」という気持ちで頑張っています。
【MonotaRO様で働いて良かった事】
辻:3年が経った今、改めてMonotaRO様で働いて良かったと思う事はありますか。
I:社員として働く前に、こちらで研修を受けていました。研修期間の終わりに採用のお話を頂き、嬉しかった事は今でも覚えています。CMがよく流れている企業ですので、知り合いなどに仕事の話をする時に「MonotaRO」と言うと説明が要りません。
辻:Iさんが研修を受けていたのは4年ほど前ですが、当時に比べてMonotaRO様のCMはさらに増えていますね。昼夜問わず流れている印象です。Iさんのおっしゃる通り、MonotaRO様であれば具体的な仕事内容の説明は不要ですね。
【3年間で勤めてから変わったと思うところ】
辻:3年間働き、自分自身が変わったと感じる部分はありますか。
I:働き始めた当初はバーコード貼りの仕事を行っていましたが、今では初めて作業を行う方に自信を持って手順を説明する事ができるようになりました。
【休みの日のすごしかた】
辻:仕事の気分転換は何かありますか。
I:はい。馴染みのコーヒー屋に行く事や1人でお酒を飲みに行く事で気分転換をしています。
【入社当初と現在の違い】
辻:入社当初と現在で、Iさんが感じておられる違いはありますか。
I:働く前は収入が見込めませんでしたが、働いている今は毎月の収入が分かるので、それを使って遠方に出かける事ができます。
【就職を目指している方へのメッセージ】
辻:現在、クロスジョブでも就職を目指して頑張っておられる方が大勢いらっしゃいます。就職して、尚且つ3年働き続けることができておられるIさんから、何かアドバイスはありますか。
I:就職したい希望の業種が決まっていない方は、インターネットや雑誌、ハローワークなどで企業実習が可能か、確認することをおすすめします。企業見学をする事で職場や働くイメージがし易くなると思います。
辻:求人票などの紙面の情報だけで確認するのではなく、企業見学や実習で実際の職場を見た方が就職のイメージがしやすいという事ですね。
【企業に対して求めている事】
辻:企業に対して求める事はありますか。
I:3点あります。「保管場所の表記がわかりにくい」「加工方法の文字が小さい」「加工方法の文字化と映像化」です。会社に社員の意見を入れる目安箱はありますが、思いついたばかりですのでまだ目安箱には入れていません。この3点について、私自身は保存場所の表記や加工方法が分かるのですが、視力の悪い方が「文字が小さくて読みにくい」と私に保管場所や加工方法を聞きにこられるので挙げました。
辻:他の方の意見を改善に繋げるために挙げられたのですね。他の方の職場環境に気を配る事ができていらっしゃるのはIさんのとても良い所ですね。
I:具体的に「加工方法の文字化と映像化」は、袋に入れる作業が袋の採寸まで記入されていると良いのではないかと思っています。
鵜狩様(以下敬称略):確かに、加工方法をアルファベットで表記しているので慣れている方はわかりますが、新しく入社された方には分かりにくいので、加工方法を映像や画像でわかりやすく説明しているものがあれば良いですね。
【今後の目標】
辻:今後、仕事の中で頑張っていきたい事があれば教えて下さい。
I:家で加工方法の順番をメモして、多くの加工方法を覚えたいです。今までは加工方法の順番が分からずに他の方に仕事をお願いしていた部分を、少しでも少なくするように努力します。
~ 企業様へのインタビュー ~
【採用の決め手】
辻:Iさんの採用の決め手を教えて頂けますでしょうか。
上森様(以下敬称略):弊社では採用させて頂く前に研修期間を設けて、お互いに働き続けることができるか確認をしています。その中で、Iさんは研修期間で作業して行く中で問題なかった事と、ご本人の「ここで働きたい」という熱意があった事が採用の決め手となりました。
辻:ありがとうございます。採用前の研修期間を設けてくださる企業がまだまだ少ないのが現状です。応募に履歴書からの書類選考が多い中、ご本人の作業を見てご本人と職場環境が合っているかどうかの確認や、雇用前の実習を行って頂ける事は大変有り難いと思っています。
【採用してよかった事】
辻:Iさんを採用して良かったと思う事を、人事の視点や現場の視点から聞かせて頂けますでしょうか。
上森:入社されてから休みが少なく、シフト通りに出社されています。4年目に入って業務の知識やできる事が増えておられるため、Iさんは現場での戦力です。
鵜狩:物量が増える中で男手が必要な時に一生懸命仕事をされるので助かっています。空調などの環境や、重量物なども不満一つ漏らさずに作業されるところは非常に有り難いです。
辻:前回訪問させていただいた際、Iさんの片手で重量物を運ぶ様子や片足で体重を移動させる様子を見て、私も感心させられました。
【配慮している事】
辻:Iさんに対して、現場の環境面等で配慮をされているところはありますか。
上森:特別に行っている配慮はありません。現場で困った事は改善する用意はありますが、ご本人からの困った事などの発信は今の所ありません。
辻:Iさんは現場の中で、ご自身なりに作業で工夫されているところがありました。それを企業様がとがめることなく、リスク管理を行った上で自分なりの工夫をしながら仕事を進めていくことができる環境だからこそ、困った事が解消されているのかもしれません。
鵜狩:以前は軽量な小物の加工しか出来ないのではないかと思い、小物の加工のみお願いしていました。Iさんの仕事への取り組み方を見て、徐々に大きい物の加工もお願いするようになりました。
【最初の印象と現在の印象の違い】
辻:入社当初から現在に至るまでのIさんの印象の違いはありますか。
鵜狩:私はIさんが入社いただいた時は別の部署だったため当初はわかりませんが、仕事場で会うと必ず挨拶をしてくれます。それは今も変わりはありません。ケース加工場での作業を始められたばかりの頃は重量物の運搬などは遠慮していた部分もありましたが、今では重量物の運搬も行っていただけています。
【これから本人に頑張ってもらいたい事】
辻:仕事の中でIさんに対して、さらに頑張ってもらいたいと感じておられるところはありますか。
鵜狩:今の時点で十分頑張っていただいています。ご本人が他の業務にも取り組みたいという気持ちであれば、どんどんチャレンジしてもらいたいです。
【働き続ける事ができる理由】
辻:クロスジョブとして、障がいのある方が「働き続ける事」に注目しています。離転職をすることなく働き続けることができるのは、ご本人にとっても企業様にとっても良い事だと思います。Iさんは3年間を振り返ってみて、仕事を続ける事ができる理由はありますか。
I:私が仕事の不明点をおぼつかない言葉で質問しても、職場の方は仕事を教えて下さるためとても助かっています。職場の方が丁寧に教えて下さるからこそ、今まで仕事を続けることができたのだと思います。
【他の企業に聞きたい事】
辻:障がい者雇用を取り入れている他の企業様にご質問などはありますでしょうか。
上森:働く現場や更衣室、お手洗い等での配慮があれば教えていただきたいです。
◆ 今回の取材を通して感じた事 ◆
今回のお話を伺って、Iさんがやりがいを持って新人の方に仕事の説明をされるなど、仕事に対して目標を持っておられる事、そして企業様がIさんを戦力だと感じておられ、Iさんのチャレンジを応援しておられるところは、「働き続ける」ための大切な要素だと思いました。
インタビューの中で「企業に対して求める事」という質問に対して、新しく入ってこられる方のために保管方法の表記や加工方法の文字の改善について提案をされたIさんは、3年間働く中で、ご自身の事だけではなく新しく入ってこられる方にまで気を配っておられ、支援者自身も仕事に対する姿勢を学ばせて頂きました。
インタビューの後、Iさんの実際のお仕事の様子を見学させて頂きました。
見学させて頂いた作業は、段ボールを開けてその中に入っている商品にシールを貼っていき、最後は段ボールを再梱包するという内容でした。Iさんは右上半身に麻痺があるため、主に左手をつかって作業され、シールを貼る作業は右手の甲にシールをのせるといった工夫をしながら商品一つ一つにシールを貼っておられました。再梱包する時や段ボールを運ぶ時も左手のみで行い、時には膝を使いながら手際よく作業されていました。作業の中には、効率よく行うためのIさんの工夫も垣間見る事ができました。
今回はご多忙の中インタビューに応じてくださった上森様、鵜狩様、Iさん。貴重なお時間を頂き本当にありがとうございました。
※ Iさんが仕事をされている様子を撮影させて頂きました。Iさんありがとうございます。
≪インタビューにご参加頂いた皆様≫
◇インタビュー対象者
・株式会社MonotaRO物流部門 上森明子様
・株式会社MonotaRO物流部門 入荷管理グループ グループ長 鵜狩恵美子様
・クロスジョブ梅田OB Iさん
◇インタビューア
・クロスジョブ堺 辻
・クロスジョブ梅田 砂川
・クロスジョブ梅田 山神