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2018 クロスジョブ障害者雇用促進フォーラム 企業訪問第13弾
「クロスジョブ雇用促進フォーラム」の連動企画として、受賞される方のインタビューをさせて頂いています。今回は日本生命保険相互会社の特例子会社「株式会社ニッセイ・ニュークリエーション」様にお勤めの西村さんです。西村さんは平成25年1月からクロスジョブ堺で訓練を開始され、平成26年4月に就職されました。
まずは採用時のことをご存知の業務部次長・相井様(以降、敬称略「相」と表記します)にお話を伺いました。
■採用のポイントは「障がいを受容していて、自分の状態をはっきり人に言える」
中村(以降、「中」と表記します):相井様は西村さんが採用された時からずっとご一緒にお仕事を?
相:そうですね、グループは違うんですけども、同じ業務部です
中:採用時の決め手、印象はいかがでしたか
相:西村君の採用に直接関わったわけじゃないのですが、一般的には障害を、受容していて、自分の状態をはっきり人に言えるとか、嘘をつかないとか、グループで一緒に仕事ができるとか、そういったところがポイントです。後は処理能力とか伸びしろを実習を通して確認して採用しています
中:では、西村さんを採用されて良かったのはどんなところですか
相:彼は勤怠が安定していて、毎日ちゃんと会社に来てくれて、処理量は多くはないですがきちんと自分の一日の仕事をこなしてくれるところです
中:では遅刻や欠勤はない
相:そうですね、少ないです
中:御社は特例子会社ということで、いろいろと配慮されている点はおありかと思いますが、個人ごとに個別に配慮されている点はありますか
相:その人によって障がい特性が違うので、個別に対応をしています
中:例えば西村さんの場合だと、どういった点に配慮されていますか
相:西村君に近い職員に代わった方が良いかと思います
ここから倉山様(以降、敬称略「倉」と表記します」、白井様(以降、敬称略「白」と表記します)にも同席頂いてお話を伺いました
■楽しく働ける仲間が周りにいるから
中:西村さんと一緒にお仕事されるにあたって、特段、配慮されている点があれば教えてください
倉:特別な配慮といいますか、彼の特性が分からないまま初めは「1ヶ月に1回」という作業をしてもらっていたんです。その作業をする中で彼は忘れやすいという面があり、「1ヶ月に1回」という作業が向いてないということがわかりました。そこで、毎日同じ作業をする担当に替わりました。その方が彼も仕事がやり易いということで、毎日悩んでいたのがうそのようにイキイキするようになりました。たまに一人で悩んだりすることがあるので、そんな時は「大丈夫ですか」と声を掛けたりして解決していくというような配慮をしています
中:西村さんを採用されてもうすぐ5年目になるのですが、最初と今で印象の違いはありますか
倉:採用された最初のころと比べると明るくなりました。いろんな人と話をするようにもなりましたし
中:それはお二人とも同じ印象ですか
白:西村君は、実習の時にはアドバイザーをさせて頂いて、今は担当が替わって直属ではないんですが今でも話はします。もともと社会不安があって自分から話すことが苦手でした。最初のころはずっと同じ建物にいるのがちょっと窮屈みたいで、「昼休みは一人で公園を散歩しに行きます。」というのをよく聞いていたのですが、最近は社内の人とご飯に行ったりしており、環境に慣れたのと同僚に馴染んできた部分が大きいのかなと思います
中:周りの同僚の方とのコミュニケーションとかやり取りも問題なくされているような感じですか
倉:そうですね、難しい話は苦手みたいですけど楽しい話を周りの人としています
中:御社は長く勤務されていらっしゃる方が沢山おられるんですか
倉:一番長い人は創業(1993年)以来なのでもう25年です
中:西村さんが長い期間働き続けられたのはなぜだと考えていらっしゃいますか
倉:環境を変えたのと、やっぱり楽しく働ける仲間が周りにいるからというのが一番大きいかなと思います。周りの発達障がいの人たちと冗談を言ったりや、たとえば朝来て「おはようございます」と言わないといけないのに「お先に失礼します」なんて間違って言っても軽く流せるようになってきたり、そういった雰囲気も彼を変えた一つかなと思います
■入社当初は通勤の電車が不安だった
中:では反対に「これは大変だったな」「ちょっと困ったな」ということはありましたか
倉:初めは「会社の最寄りの御幣島駅に電車が着いたかどうかが分からない」って言っていて、いつも自分が乗っている車両からは駅名表示が見えないらしくて、「じゃあ見える車両を探してそこに乗ったらいいのじゃない?」ってアドバイスしたら駅名表示が見えるようになって不安がなくなったようです。本人も会社生活に慣れてきて通勤も困らなくなっていると思います。今では朝は時間を決めて来ているので、困っていることは無いと思います。まあ、ストレスが理由かはわからないですけどちょっと太ったんですよ(笑)。最近は薬があっているのか、生活が安定してきたからか、今ではだいぶスリムになって15kか20kくらい痩せましたね。「大丈夫?病気じゃない?」って言ったんですけど(笑)、本人は「大丈夫です。今の方が体調も良い」って言っていました。
荒木(以降、「荒」と表記します):結構そういう調子の良い悪いが体格に出やすい方だと思います
荒:入社された時の通勤の不安を私も聞いていまして、「乗り過ごしたらいけない」とか、自分が見慣れない駅なので「自分がどこにいるのかわからない」って言うのが続いていて…
倉:今はもう無いと思います
荒:ああ、良かったです
■「お互い支えあう」っていうのが自然にできている
中:最後になりますが、他の企業様に聞きたいことか、ニッセイ・ニュークリエーション様の取組みで自慢できることがあれば教えてください
倉:毎日同じ人とお仕事をしているのであんまり実感は無いのですけど、ここは対応がいいと思います。
白:私もここの会社で働いたのが初めてで他の会社は分からないのです。手に障がいがあって歩けないという重度な障がいを持っている中で、私も8年働き続けられているのは、周りの協力とかみんなが自然に声かけや、私が会社の一番好きなところである「お互い支えあう」っていうのが自然にできているのが一番良いのかなと思います。
さっきの西村君の話についても、薬が合わなかった時に無意識の内に寝てしまうことが有ったのですけど、隣の方が起こしてあげたりとか、上司に報告して上司から「最近寝てること多いから病院行って診てきてもらった方が良いんじゃない?」と注意してもらったりとかしました。状況が分かればアドバイスもできるし、上司といえども部下一人ひとりを細かく見られない状況で、自分たちの周りの人も障がいのことを気にかけている、っていうのが大きいのかなと思います。
荒:一つ教えて頂きたいのですが、今回のフォーラムの一番根本的なところが「なぜ働き続けられるのか」ということなのです。それは障がいの有無に関わらず、「長い期間働いていくために大切なことって何なのかな?」というのが根底にあるのですが、それを一言で表す「一番大切なこと」って…
白:長い間働くって、自分もそうですけど「苦しい時、つらい時を乗り越えることができれば長く働ける」とは思います。彼も苦しい時つらい時があったと思うのですが、工夫を一緒に考える、会社によっては「それは自分で乗り越えなさい」っていうところもあると思うのですが、ここはそういうのは無いです。
「自分一人で考えることはやめてみんなで一緒に考えましょう」っていうところがあります。みんなが働き続けられるのは一人だけで解決するのではなく、例えば心の調子が悪い時は、会社の心理士の先生に相談してちょっと気持ちを落ち着かせて、といった体制もここは整っています。
中:「一人で悩まずにみんなで励ましあう」という…
白:そうですね。みんな同じだと思います、私たちも見習わなきゃいけないですね
倉:「楽しく働く」というのが一番だと思います
続いて、西村さんにお話を伺いました
■クロスジョブでのこと
中:クロスジョブの訓練で好きだった、役に立った訓練はありますか
西:好きやったのは100円ショップの組み立てる作業です
役に立ったのはパソコンとか、言われたことをメモに取るっていうのは役に立っています
中:反対に苦手だった、嫌いだった訓練はありますか
西:掃除は苦手でした(笑)
中:ビル清掃ですね、僕もしていましたけど、あれしんどいですもんね(笑)
■就職して良かったこと
中:そういった訓練を経てニッセイ・ニュークリエーションさんに就職されたわけなのですが、就職して良かったことは何ですか
西:良かったこと…何やろうな?・・・仕事じゃないんですけど手話を覚えて話せるようになったのが嬉しかったと思います。
中:ニッセイ・ニュークリエーションさんで働いておられる方は皆さん手話ができますもんね。皆さんコミュニケーションを取る上で自然と覚えていかれるものなのですか
西:そうですね。それもありますし、仕事が終わった後に手話教室が月一回ありまして、それで覚えました。あと手話委員が、朝礼で短文の手話を教えてくれます。
中:では反対に「これはしんどいな」「これは困ったな」っていう事はありましたか
西:……ありました(笑)
中:(笑)ありましたか、どんなことがしんどかったですか
西:何回やっても理解できないことがあって困りました。あと睡眠障害があって、仕事中に眠たくなって寝てしまってミスしたっていうのも何回もあります。それはちょっと困りました。
中:眠たくてどうしようもない時はどうしているのですか
西:休憩に行かしてもらったりしているのですが、それでも眠気が取れないときはどうしようもないです
中:睡眠障害の時は朝まで眠れないのですか
西:薬を飲んでいるので寝るのは寝るのですけど、それでも眠たくなるのです
■電車を乗り過ごしても遅刻した事はないです
中:そうですか。では西村さん、会社への通勤時間はどれくらいかかりますか
西:1時間半くらいです
中:電車は座れる?
西:環状線では座れるけど他では座れないです
中:ものすごく眠たい時に電車で寝てしまったりしないですか
西:します
中:乗り過ごしたことは
西:何回もあります(笑)
中:乗り過ごして遅刻したとか、会社帰りで遠くまで行っちゃったとか
西:あ、帰りは無いです。出勤の時は寝てしまって尼崎の方まで行ってしまったとか何回かあって、でも遅刻はしたこと無いです
中:さっきも勤怠はすごく良いってお聞きしたので、大分余裕を持って出発しているのですね
西:そうですね。会社の始まる30分前には駅に着くようにしています
中:お仕事は月~金で、土日祝はお休みですか
西:はい
■最終確認をしたときは「やったぞ!」
中:お仕事のやりがいを感じる時ってどんな時ですか
西:やりがい……、最終確認をやったときはやりがいを感じます
中:最終確認って言うのは…?
西:誰かが処理して、次に確認して、最後に最終確認を行う流れになっています
例えば、はがき作成のときに最終で僕がちゃんとできているかを見て、その最終確認が終わった後に初めて外に出します
中:責任あるお仕事ですね
西:そうですね、それをやったときに
中:やったぞ!みたいな
西:(笑)はい
中:そうですね。大事な最終チェックですもんね
中:では、就職してから、どれくらいの期間クロスジョブのスタッフとの関わりがありましたか、ジョブコーチは?
西:使ってないです
中:おそらく入れないですよね
荒:最初の方だけでしたねぇ
中:じゃあ、就職されてからはクロスジョブのスタッフとよりも、会社の方とのやり取りのほうが濃くなっていった感じですか
西:初めはクロスジョブに相談したり、たまに面談行ったりしたのですけど、あとはエマリス(堺市障害者就業・生活支援センター)に相談したりしました
中:さきほど睡眠障害のことを仰ってたんですが、それ以外にも仕事をしていく上で悩んだりしんどかったことってありましたか
西:うーん、自分の担当の業務が何回やってもできないものがあった時は、上司の人に言ったり、エマリスの人に言ったりして変更してもらいました。
中:それは何でできなかったんでしょうか。苦手な分野のお仕事だったのですか
西:う~ん、月の流れが全くもってわからないです。ひと月の流れの中で「これは出来るけどこれは出来ない」っていうのが凄くあって、何回やってもミスするのもありましたし、覚えられないし・・・
中:全体を捉えるのが苦手な感じですか
西:そうですね
中:細かいお仕事のほうが得意な感じ、例えばはがきのチェックであったりとか
西:はがきは1週間単位の仕事なのですよね。1ヶ月単位の仕事となると長くて工程も多いので、それでもう、覚えられないっていう…
中:悩んだ時・しんどい時の西村さんなりの「こうすれば乗り越えられる」っていうのはありますか
西:誰かに話す
中:気分転換として、誰かに聞いてもらう…
西:出来ないのであれば上司に言うとか、ここの会社は心理士面談ってあって心理士さんと話すのですけど、その人に聞いてもらったりとか
■「あ、これだけ仕事あるのや」
中:では、「ここで5年近く働いていて良かったなぁ」って思うことってどんなことですか
西:障がいとかあっても「あ、これだけ仕事あるのや」っていうのがあって、同じように障がいの人もいっぱいいるし、他の会社は分からないですけど「ちゃんと仕事できている」っていうのは良かったなと思います。
中:「ちゃんとできている」っていう実感はご自分の中にありますか
西:いや、実感はあんまり無い(笑)
中:じゃあ、5年前の就職した時と5年目を迎える今とでご自分で「俺の中のここが変わったな!」と思うところってどんなところですか
西:変ったところ…そんな変ってない(笑)
中:変ってないところが良いのかも知れないですね。無理して変らないといけないわけではないですからね。じゃあ、3年前と比べて西村さんの中では極端には変ってない感じ…
西:無いです
中:クロスジョブに通われる前はお仕事したことはあったのですか
西:ないです
中:ではクロスジョブに入る前と今では何か変ったと思うところはありますか
西:あるといえば、あるのですけど…働いてない時はずっと家に居たので外に出ることがなかったですよ。外に出やすいっていうか出るようにはなったなと思います。
中:じゃあお休みの日は外に良く出かけるのですか
西:そうですね
中:お休みの日は何をしているのですか
西:友達と遊びに行ったりご飯食べたり…
中:最近どこか行きました?
西:最近は…ボウリング行ってご飯食べてっていう感じで…
中:遊びに行って「ここ楽しかった」っていうところありますか
西:海遊館は楽しかったです
中:では、ニッセイ・ニュークリエーションさんで今後も働いていく上で「こうなって行きたい」っていう西村さんの中のイメージ、「こんな仕事が出来るようになりたい」とかっていうイメージを持っていますか
西:今のままが良いかな(笑)
中:現状維持で(笑)
西:はい(笑)
中:でもそれも大事なことですよね
荒:受け答えが西村さんらしいなって(笑)「今のまま」を続けるって、「今のままの状況」ができるのに色んなことを乗り越えて来られていると思うので、今、西村さんが言われたことって凄く大事なのかなぁと聞かせてもらっていました。業務の変更とかしてもらったり、その辺は配慮を頂けて良かった点かなと思います
中:「変らないでいる為に変る」っていうのが必要なのかも知れないですしね。西村さん自身は気づいてないかも知れないけど、会社の方から見ると「いや、結構変ってきたよ」って言う点もあるかも知れないですね。それが良い部分に働いているからずっと継続して働き続けていられるのかも知れないと、私は思いました。
徳谷(以降、「徳」と表記します):手話を覚えられたり、委員会活動に参加されたりっていうのが、働き続ける上でプラスに働いたりされていますか
西:役には立つけどそこまでは正直ない(笑)
中:まあ、無理に結び付けなくてもいいですよ(笑)
荒:最初大変でしたよ。業務時間外にすることが多くて、委員会とか通信教育のテキストとかがあって、そこが一番に悩んだとこでしたね。
中:あぁ、委員会は原則勤務時間内ですが
荒:そう、手話覚えなきゃいけないとか、こういう勉強しなきゃいけないっていうのがね
西:今も、ですよ (笑)
荒:今も続いているのですね
中:日常的に手話で会話が出来る感じなのですか?
西:手話は結構同じことの繰り返しになっています(笑)
■働いたら今よりしんどいけど、がんばれ
中:では、今クロスジョブで就職を目指して訓練を受けておられる方が大勢いらっしゃるのですけど、3年勤続の先輩としてメッセージを頂けますか
西:働いたら今よりしんどいと感じるでしょうけど、「がんばれ」としか言いようがない(笑)
中:会社に対しての要望とか、今のうちに言っておきたいことってありますか。「給料上げてほしいとか」
西:給料は上げて欲しいけど、あんまり仕事できる方じゃないからあんまり言えない(笑)
中:そうか、全然自分に自信がないねぇ(笑)
西:そんな、与えられた仕事を変更してもらったので…。あんまり「出来ている」っていう風に思わないです
中:じゃあ、苦手な1ヶ月単位の仕事を出来るようになりたいとかは
西:前は思っていたのですけど、今はもういいかなって(笑)、今はもう「出来ることをやる」っていう感じです
中:無理して苦手なことに手を出して失敗するよりは、出来ることを確実に、っていう感じ
西:う~ん、出来ないものは何やっても出来ないので
中:ひょっとしたらそれも長く働き続けるコツかも知れないですね。出来ないことをやろうとして失敗を重ねて「アカンわ」と思うより、出来る仕事がそこにあるのならそれを一生懸命やる、っていうのも大事かも知れないですね
◆インタビューを終えて◆
一つ一つの質問にじっくり考えて答えてくれる西村さん。自信なさ気に聞こえますが、「自分に出来ることを確実にやる」というのも長く働き続ける上ではとても大事なことなのだな、とお話を伺って感じました。
今後は少しずつでも業務の幅を広げていって、より長く働き続けられることを応援しています。
≪インタビューにご参加頂いた皆様≫
◇インタビュー対象者
・ニッセイ・ニュークリエーション 業務部次長: 相井様
・ニッセイ・ニュークリエーション 業務部主任: 倉山様
・ニッセイ・ニュークリエーション 業務部副主任:白井様
・ニッセイ・ニュークリエーション 勤務:西村さん
◇インタビューア
・クロスジョブ堺 荒木 徳谷
・チャレンジャーズ 中村