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2018 クロスジョブ雇用促進フォーラム 企業訪問第20弾
「2018年クロスジョブ雇用促進フォーラム・3年勤続表彰」に向け、インタビュー訪問を行いました。
今回は阿倍野事業所からの就職者・Tさんが勤務をされている【東京海上ビジネスサポート株式会社】様です。
Tさんはオフィスの中で事務作業や軽作業のお仕事に取り組まれております。
今回のインタビューでは、企業のご担当者様にTさんの仕事内容や会社の取り組みをお伺いしました。
障がいのある従業員の方、一人ひとりが戦力となる会社作りのエッセンスが詰まったインタビューです。
◆ 採用に至った決め手 ◆
クロスジョブスタッフ(以下、CJ):まず始めに、Tさんの採用の決め手となったことをお伺い出来ますでしょうか。
広岡様(以下、広岡):Tさんには雇用前実習として2週間の業務経験をして頂きました。
その中で、就労して自立していくとの姿勢、そして1日6時間×週5日の勤務体力や指示に対しての的確な対応、メモ取り、復唱確認など就労における基本をしっかり押さえられた方だと感じました。
実習での多面的結果を見て、「職業準備性が高く就労可能」と判断し、トライアル雇用にチャレンジして頂きました。
3か月のトライアル雇用期間中も安定性を有し「頑張って働く」という姿勢が顕著であり、本人の就職希望も明確であったため採用に至りました。
◆ 印象の変化 ◆
CJ:就職時と現在、変化はありますか。
広岡:とても成長されました。
入社当初はどんな指示に対しても「はい、分かりました」と返事をして業務を進められていましたが、指示通りに仕事が出来ていないことがありました。Tさんとしてはどの様に質問をしたら良いのか戸惑いがあった様ですが、指導員からは「メモ取復唱確認を行い、分からないことがあれば質問をして、不明点をなくしてから作業に入ることでミスを防ぐことが出来る」ということをお伝えしました。
この関わりを繰り返すことで、Tさんは質問をしないことが作業ミスに繋がること、質問はしてもいいもの・するべきものだという理解がしっかり身に着きました。現在は指示で分からない事はしっかり質問をし、「理解が追い付かず申し訳ありません」と言いながらもメモをしっかり取って作業に入ることができるようになりました。
向上心も旺盛で、帰宅してからも仕事の復習をしている様子で、こうしたTさんの地道な努力が業務習得に繋がっているのだと思います。
◆ 現在の仕事について ◆
CJ:仕事内容についても教えて頂けますか。
広岡:元々所属していたチームの業務が東京に移管となったため、1年程前にPCチームへ異動となりました。以前のチームでは、手順書を見ながらPCを使用してルーティン業務をこなしていく基幹業務に従事していましたが、全体の作業工程の把握が難しく、作業ミスに繋がる事が多くあり、作業の取り組みにくさを感じておりました。
しかし、現在の担当業務については、全体の工程が「見える化」されていることで、確認作業がしやすく、高いパフォーマンスを発揮しています。適した業務に従事されることで、スピード面や精度面、集中力を発揮出来ており、Tさん自身もその実感を持つことができました。
先日、就業・生活支援センターの方にお越し頂いた時、Tさんからは「今頑張れていることをもっと頑張りたい」と前向きに発言してくれていると聞きました。その反面、不安な気持ちや自信のなさもあることを知りました。
自己評価があまり高い方ではないので、会社としては出来ていることをしっかり伝え、「チャレンジ精神に繋がるステップアップをしていきましょう!」と話をしています。
また、Tさんには、責任のある仕事もお願いしています。クール毎に進めている作業で、次のクールに進むうえで必要なツールを準備するという中継ぎ作業をお願いしており、そこに対して遣り甲斐を持って作業をしてくれています。ご自身も作業をしつつ、全体の進捗状況を確認しながら行う流動的な作業なので難しさがあるかと思っていましたが、作業や物の置き場所がしっかり決まっており、そして質問が出来る指導員がいることで安心して作業が出来ている様です。
CJ:従業員の方が、業務の中で質問出来る様に行っていることや工夫はありますか。
広岡:Tさんの場合、「分かりました」という返事とは裏腹に、正しく指示理解に繋がっていない状況がある事を社員間で共有しました。
社内の取り組みとしては、Tさんが指示を理解出来ているか確認を行いました。また、理解をして仕事に取り組むことがミスを防ぐこと、分からない事は理解できるまで何度でも質問してもいい、と言うことを伝えていきました。
「こんなこと聞いてもいいのか?」という不安感もあると思うので、質問をして頂いた際は「聞いてくれてありがとう」と伝える様にしています。質問することでミスが防げた、という成功体験に繋がっていければ嬉しいですね。
それぞれの従業員にあった仕事の方法や伝え方を考えることが指導員の仕事でもあるので、一人ひとりと根気よく関わっていきたいと思っています。
CJ:貴社は早期から発達障害のある方を雇用されていました。その中での試行錯誤などがあれば教えて頂きたいです。
広岡:最初は4人のチャレンジサポーターの雇用から始まり、従業員数が増えていく中で、指導員間で相談しながら体制を整えてきました。初期メンバーである4人には、挨拶や基本的なマナーを徹底して伝えていたので、後から入社した者もきちんとしたマナーを持って働くことが当たり前と認識してくれています。この点は、お客様をはじめ、多くの方から評価を頂いています。
一方、仕事を進める中で、難しい、失敗したと思う事も多々ありました。
例えば、毎日朝礼を実施し、その中で業務などの申し送りをしていますが、従業員数が増えることで、全体の申し送りでは全ての従業員に、正確な内容が伝わらない状況が発生しました。そのため、全体朝礼の後にチーム毎のミニ朝礼を実施し、理解が難しかった内容の補足説明・正確な内容が伝わっているかの確認を行うようになりました。
◆ 業務の切り出しについて ◆
CJ:新しく障害者雇用を始められる企業が増え、業務の切り出しが課題となることが多くあります。貴社での業務切り出しや業務分担についてお話頂きたいです。
広岡:私たちの業務切り出しや業務分担は、会社全体でプロジェクトを組み、事業開発部(新たな業務を創出し、各部門への振り分けや調整を司る機能を有する本社部門)が主体を成し、現場と共に業務引受の検討を行っています。因みに受託金額も検討内容の一つです。
打ち合わせの中で、「こういう取り組み方なら出来る」、「こんな工夫は可能か」など交渉を行います。特例子会社である弊社だけでなく、東京海上グループ全体で業務の洗い出しを行っていることが特徴かもしれません。
大阪支社では作業量の多い基幹業務を受託することによって、仕事の拡大に繋がっていますね。
現在Tさんが従事している仕事は一番新しい基幹業務で、大阪支社の最大規模の業務です。これまでは各チームで業務を行い、人数が足りなければ応援にまわるスタンスを取っていましたが、新しい業務は支社の社員全員で作業に従事しています。
工程が細分化しやすい業務であるため、一人ひとりの強みに応じた作業を担当して頂くことが出来ています。自分の強みを発揮できる仕事が出来ること、支社全体で仕事に取り組んでいるという、一体感が生まれていると思います。
◆ 障がい者雇用について ◆
CJ:障がい者雇用に取り組まれてのエピソードがあれば教えて下さい。
広岡:従業員は本当に一生懸命働いてくれています。例えば、勤務時間内は手を抜くことなく、取り組んでいる仕事が終われば、作業の完了報告をした後、すぐに「次の作業指示をお願いします」と確認をしてくれます。私たちとしても前向きな姿勢の方々と働くことで、日々の業務で遣り甲斐や喜びを感じることが出来ています。
また、「東京海上ビジネスサポートで働けて良かった」と言ってくれるチャレンジサポーター*も多くいて、「もっと魅力的な会社にしなくてはいけない」とエネルギーを貰えていますね。
現在会社で働いているチャレンジサポーターには、「私が定年する時は見送ってね」ということも伝えたりしています(笑)。
彼らに夢を聞くと「定年まで健康で働きたい」と語ってくれることもあるので、みんなが定年まで活躍できる会社環境を作りたいと奮闘しているところです。
*【注釈】チャレンジサポーターとは、東京海上ビジネスサポート株式会社における障がいのある従業員の呼び名
◆ 定着率について ◆
CJ:先ほど、チャレンジサポーターの方が「この会社に来てよかった」と感じられていることをお聞きしました。
「働きたい」と思う会社作りや高い定着率を挙げられている要因はどんなところにあるのでしょうか。
広岡:「障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する」が第一義です。全ての考えの普遍性を成します。そしてチャレンジサポーター自身が努力すると共に会社としては多様な工夫(合理的配慮)および効果的な資源の投下を不断に実行することが重要であると思います。いわゆる「個人モデル」「社会(ここでは会社)モデル」のベストミックスではないでしょうか?
具体的の例を紹介しますと、支社の仕組みとしてチーム制を導入し、担当指導員を決めていることです。質問する相手や仕事が明確になっているところがポイントにあると思います。何かあれば相談をして解決できるような体制を心掛けています。
先ほどもお話をしましたが、チャレンジサポーターが「分からない事は聞いても大丈夫だ」と感じる雰囲気があれば、仕事に対する不安感は拭い去れるのではないでしょうか。
また、「チャレンジサポーターの意見をもっと聞こう」ということで、改善提案などが挙がってきた際は、そこに対してもすぐに行動を取るようにしています。自分が発信したことが目に見えて改善されていると、「みんなで会社を作っている」という喜びにもなっている様に思います。
働き方の視点で言うと、通勤ラッシュを避けた始業終業時間、昼食時は混雑を避け少し早目のお昼休みなどは、極めて有効であると思います。また、計画的に休暇を取得していくことも奨励しており、休暇取得率も目標値に近づきつつあります。
昨年度から始めた取り組みとして、年に数回、チャレンジサポーターが役員や部・支社長と、直接話合い、意見を発信できる機会も設けています。結構みんな率直な意見や考えを出してくれます。
今後は多様な働き方を進化させていくことや、社会性と認知性を高めていく取り組みなどを早期に実践できればと思っています。
◆ 今後について ◆
CJ:障がいがあっても一人ひとりが力を発揮出来る会社作りをされていることが分かりました。今後の展望などをお聞かせ頂けますか。
広岡:弊社は設立から10年に満たない会社で、チャレンジサポーターの中には30歳を超える者が何名か出てきたという状況です。今は若いメンバーが中心に働いてくれていますが、将来的に訪れるであろう、彼らの加齢問題や家庭のバランスが崩れた時の対策を検討していく必要があると感じています。この件に関しては、先駆的に障害者雇用に取り組まれている他企業の方にも意見を聞きながら準備を進めていきたいです。
また、いつまでも遣り甲斐を持って仕事をして貰える様、仕事の創出や業務確保は今後も継続した課題になるであろうと思います。
◆ 最後に… ◆
▽東京海上ビジネスサポート株式会社 広岡様より
「Tさんはチーム異動を経験することで仕事の遣り甲斐を高められました。
働き続けることに不安は付き物だと思いますが、会社の配慮として少しでもその要素を取り除き、今後も多くの挑戦が出来る環境を作りたいと思っています。
また、Tさんは働き続けることで”職場の先輩”という立場も経験しています。後輩が出来たことに対する気持ちの変化や経験を積み重ねてきた結果として信頼感も得られていますので、今後も活躍に期待をしたいです。
障がい者雇用を取り巻く環境は刻々と変化し多様になってきていることもあり、今後会社としてどういった可能性があるのか、何が出来るのか、どんなところに自分たちの役割が求められているのかを見出していきたいと考えています。」
※インタビューの最後に支社長の亀井様からもコメントを頂戴しました※
▽東京海上ビジネスサポート株式会社 大阪支社 支社長 亀井様より
「日々チャレンジサポーターと接する中で、彼らが支援機関を心の拠り所や本音で接することのできる場所と感じていることを改めて認識しました。お世話になっているクロスジョブ様におかれては、Tさんの職業準備の初期段階から接してこられ、公私において常にご支援を戴いていることが就労定着の根源であります。即ち、特例子会社である弊社は支援機関、生活支援、医療、そしてご家族等々の連携によって成り立っていることを決して忘れてはなりません。大変感謝しております。
今後の取組みとしては、障害者雇用に関し、これまでの具体的なノウハウや経験につき、その有効性および合理性を事実やデータに基づき論理的に検証し標準化を図っていきます。特に発達障害は見えにくい障害であり、解明されていないことも多く、さらなる研究と経験を重ねていくことが肝要であります。こうした現状を踏まえ、大学や医療などとも連携を図り、高い専門性を具備していくよう努力していきたいと考えます。」
■インタビューを終えての感想 ■
▽クロスジョブ梅田 砂川
今回のお話を聞き、従業員の能力を発揮するためには、本人を仕事に合わせるのではなく、仕事を本人に合わせることが大切であると学びました。
また、仕事の中で力を出せることが「この会社で働きたい」と言う気持ちに繋がるのだと感じ、東京海上ビジネスサポート株式会社の指導員の皆様が多種多様な業務確保に尽力をされているのは、障害のある従業員の方を会社の大切な戦力として考えていらっしゃるからではないかと考えます。
広岡さんは「常に勉強していくことが大切」とお話されていました。私たち支援者も日々の学びと丁寧な支援を心掛けることを念頭に置き、今後も企業の皆様から学ばせて頂きたいと感じました。
障害者雇用に対する熱い思いをお聞きし、身の引き締まるインタビューとなりました。ありがとうございました。
▽クロスジョブ阿倍野 出原
今回お話をお伺いし、ついていきたいと思える環境があるからこそ、Tさんをはじめ他従業員の方々も「定年まで働きたい」と思える職場であるのかと思うと同時に、そういった職場環境への取り組みは続けていっていただきたいと思いました。また、その方の強みが発揮される環境や特性に応じた配慮があれば活躍できることを実感しました。
私達もその原動力を見習わしていただきたいと思います。
今回は、このような機会をいただき誠にありがとうございました。
≪インタビューにご参加頂いた皆様≫
◇インタビューイ
・東京海上ビジネスサポートセンター株式会社 支社長 亀井様
・東京海上ビジネスサポートセンター株式会社 広岡様
◇インタビューア
・クロスジョブ阿倍野 濱田、出原
・クロスジョブ梅田 砂川